ES(従業員満足度)を向上させるポイントと成功した事例
小売店舗が取り組むべきなのが、ES(従業員満足度)の改善です。ES(従業員満足度)は、従業員の定着率を高めるだけでなく、店舗の売上と正比例の関係にあることがわかっています。たとえば厚生労働省の調査によると、「従業員と顧客満足度の両方を重視する」企業は、「顧客満足度のみを重視する」企業よりも、売上高が上昇しています。[注1]
そのため、多くの小売店舗がES(従業員満足度)の改善を目指し、従業員がやる気やモチベーションを持って働ける店舗づくりに取り組んでいます。
この記事では、ES(従業員満足度)の向上が必要な理由や、改善するためのポイント、ES(従業員満足度)の向上に成功した小売業・サービス業の事例を詳しく解説します。
ES(従業員満足度)で異なる従業員の意識
ES(従業員満足度)が高い場合と低い場合では、店舗で働く従業員の意識が大きく変わります。ES(従業員満足度)が高いと、従業員のサービスの質が高まるため、結果として顧客満足度の向上につながります。
逆にES(従業員満足度)が低ければ、やる気やモチベーションの低下が見られ、サービス品質の悪化や短期離職の増加といったリスクがあります。まずは、ES(従業員満足度)が高い・低い場合に起きることを知っておきましょう。
ES(従業員満足度)が高い場合
ES(従業員満足度)が高い店舗は、従業員1人ひとりのやる気やモチベーションが高く、主体的に仕事をするようになります。小売業やサービス業の場合、ES(従業員満足度)は顧客満足度と正比例の関係にあります。ES(従業員満足度)が高ければ、従業員が顧客の期待を把握し、忠実に応えようとするため、サービスの質が高まります。
このES(従業員満足度)と顧客満足度の関係のことを「サービスプロフィットチェーン(SPC)」と呼びます。
ES(従業員満足度)が低い場合
逆にES(従業員満足度)が低い場合、従業員は目の前の仕事しかしなくなり、サービスを改善しようとする意欲がなくなります。接客やレジ打ち、品出しや店内清掃などさまざまな業務で、ダラダラと働いている姿勢が顧客に伝わり、顧客満足度の低下につながります。
また、ES(従業員満足度)が低い社員は、その企業や店舗で働きたいという強い意欲がありません。そのため、短期離職が増加し、人手不足をますます加速させるリスクがあります。
ES(従業員満足度)向上のためのポイント
「従業員の短期離職が多く、いつも人手が足りない」「従業員のやる気がないという苦情やクレームが寄せられた」場合は、早急にES(従業員満足度)を改善する必要があります。ES(従業員満足度)を向上させるうえで大切なのが、「従業員との信頼関係を構築すること」です。
ここでは、小売店舗が従業員満足度を改善するための2つのポイントを紹介します。
コミュニケーションを活性化させる
従業員と信頼関係を構築するうえで大切なのが、コミュニケーションの活性化です。店舗運営では、スタッフ同士や店舗間のコミュニケーションや、店長からスタッフへ、本部から店舗への業務連絡など、さまざまな情報伝達を迅速に行う必要があります。情報の伝達がうまくいかなければ、「現場の声に耳を傾けてくれない」「コミュニケーションが不足している」など、孤立感が生まれたり信頼関係が失われたりする原因になります。
とくにコロナ禍の影響で、コミュニケーションの手段が限られる今、スタッフや店舗のコミュニケーションを活性化させることが、ES(従業員満足度)向上のためのポイントです。
スタッフ教育を強化し、能力を発揮できるようにする
国民生活金融公庫のアンケートでは、従業員の29.0%が「働くうえで特に重視していること」として「自分の能力を発揮できること」を挙げています。[注2]
ES(従業員満足度)を高めるうえで、給与水準や労働時間の適正化と同じくらい重要なのが、店舗教育や人材教育です。
店舗教育や人材教育に力を入れ、即戦力化すれば、スタッフはより仕事に手応えややりがいを感じられます。ワンランク上のES(従業員満足度)を目指すなら、スタッフ教育を強化し、スタッフがよりパフォーマンスを発揮できる環境を整えることが大切です。
ES(従業員満足度)向上に成功した小売・サービス業の事例
ES(従業員満足度)向上にむけて、小売店舗はさまざまな取り組みを行ってきました。先行企業の成功事例を分析し、ES(従業員満足度)改善のアイデアを学びましょう。ここでは、オリエンタルランドや高島屋など、ES(従業員満足度)の改善に成功した小売・サービス企業の事例を4点紹介します。
「ファイブスターカード」の仕組みを導入したオリエンタルランド
オリエンタルランドは、自社が運営するディズニーランドで働くキャストの努力や頑張りを評価し、「ファイブスターカード」を手渡す仕組みを導入しています。ファイブスターカードの存在により、キャストのモチベーションがますます高まった結果、ゲスト(顧客)へのサービスの質の改善にもつながりました。
サービスプロフィットチェーン(SPC)の好事例の1つです。[注3]
女性の働きやすい職場づくりに成功したストライプインターナショナル
アパレルの製造・販売を行うストライプインターナショナルは、2017年時点で女性管理職の比率が過半数を超えるなど、女性の働きやすい職場づくりに成功しています。ストライプインターナショナルがまず取り組んだのが、会議数や会議時間の削減です。
育児や介護をしながら働ける職場づくりを目指した結果、女性従業員を中心にES(従業員満足度)の向上が見られました。[注4]
月平均残業時間を4.5時間に減らした高島屋
大手百貨店の高島屋では、ES(従業員満足度)向上の施策の1つとして、社員のワークライフバランスの改善に取り組みました。小売業界につきものの長時間労働を脱却し、2017年度の月平均残業時間を4.5時間まで削減。さらに有給休暇の平均取得日数も10.3日に上昇し、店舗で働く従業員が仕事とプライベートのメリハリをつけられるようになりました。
また、小売業としては異例の、小学4年生まで対象を拡大した育児勤務制度を導入し、子育て中の女性スタッフが働きやすい環境を整えました。[注5]
「日本一楽しいスーパー」を目指す佐竹食品
佐竹食品は組織改革の一環として、正社員だけでなくパート・アルバイトも対象に、従業員満足度調査を実施しました。調査結果から浮かび上がったのが、現場で働く従業員の「自分はなんのために仕事をしているのか」という不安感でした。そこで佐竹食品は、「日本一楽しいスーパー」の企業理念の浸透を目指し、店舗を1日休みにして行う「ありがとう総会」を実施しました。全従業員で企業理念を再確認した結果、「ありがとう総会」の実施月は過去最高益を達成。
ES(従業員満足度)向上により、売上アップを実現しました。[注6]
ES(従業員満足度)を改善し、やりがいを持って働ける店舗づくりを
この記事では、ES(従業員満足度)を向上させるためのポイントや、小売・サービス業の成功事例について紹介しました。ES(従業員満足度)が高い店舗とそうでない店舗では、現場で働く従業員の意識が大きく異なります。ES(従業員満足度)のスコアは、顧客満足度のスコアと正比例の関係にあります。
ES(従業員満足度)を改善し、やりがいを持って働ける店舗づくりに取り組むことで、顧客満足度を高め、売上アップを実現することが可能です。
待遇や雇用環境の改善にとどまらず、従業員との信頼関係を構築することが、ES(従業員満足度)改善につながります。
[注1] 厚生労働省:取り組みませんか?「魅力ある職場づくり」で生産性向上と人材確保
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000210044.pdf
[注2] 国民生活金融公庫総合研究所:小企業における ES の現状― 「従業員満足に関する調査」 結果より―
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/chosakiho200608_01.pdf
[注3]株式会社オリエンタルランド:企業風土とES(従業員満足)
http://www.olc.co.jp/ja/sustainability/social/relation/recognition.html
[注4]株式会社ストライプインターナショナル:キャリア形成・制度
https://staff-recruit.stripe-intl.com/career/
[注5]高島屋グループ:安心して働ける職場づくり
https://www.takashimaya.co.jp/corp/csr/employee/workplace.html
[注6]佐竹食品株式会社:VISION
https://satake-takenoko.co.jp/vision/index.html
お困りごとがありましたら、お気軽にご相談頂ければと思います。
執筆者情報:
ユニリタ STORE+チーム
株式会社ユニリタ ビジネスイノベーション部
多店舗管理ツール「STORE+」のプロモーション担当チームです。
コミュニケーション情報を蓄積・共有・活用するシステムに長年携わってきたメンバーが、多店舗・多拠点の管理に課題を持つ方に、役立つ情報をわかりやすく発信することを心がけています。